おはようございます。目黒区の司法書士の増田朝子です。

 

中古車を割賦販売(分割払い)で売却したが、買主の債務不履行があった場合、売主は勝手に買主から中古車を引き上げることができるのでしょうか。

そんなお問合せがありました。売買契約書には、代金の不払いがあったときには、自動車を引き上げることができるとの記載があったとのことです。

 

割賦販売法7条には、同法の適用がある法律には、【所有権留保の推定】があるとの規定があります(二か月以上、3回以上の分割払い)。

 

所有権留保とは、売買代金を完済する前に目的物を先に引き渡す売買において、この代金債権を担保するため、売買代金完済時まで売主が目的物の所有権を留保するものです。

所有権留保は抵当権のように担保物権の一種ですが、抵当権のように民法上の規定はありません(非典型担保)。

所有権留保は、原則は当事者の合意による約定担保で、主として中古車などの動産割賦販売において用いられています。

 

所有権留保がついた自動車は、売買代金が完済されるまでは、買主には自動車の所有権は移転しませんので、当然車検証の名義は売主のままです。

そして売買代金の支払いについて債務不履行があった場合は、売主は契約を解除して、所有権に基づく引渡を請求することができるようになります(最判昭 50.2.28)。

 

それでは売主は、買主の同意なく、中古車を引き上げられるのでしょうか。

 

私人が法の定める手続によらずに自己の権利を強制的に実現することは禁止されていますので(自力救済の禁止)、売主は引き上げにあたっては買主の同意を得る必要があります(同意書の取得)。

買主に同意を拒まれた場合は、自動車の引き上げは裁判手続きを経て行うことになります。

 

また、売主は、買主から返還された自動車から代金債権を回収することになりますが、自動車の価値が、未払いの売買代金の額を上回る場合には、清算が必要となります。

 

割賦販売法

(所有権に関する推定)
第七条 第二条第一項第一号に規定する割賦販売の方法により販売された指定商品(耐久性を有するものとして政令で定めるものに限る。)の所有権は、賦払金の全部の支払の義務が履行される時までは、割賦販売業者に留保されたものと推定する。

(定義)
第二条 この法律において「割賦販売」とは、次に掲げるものをいう。
一 購入者から商品若しくは権利の代金を、又は役務の提供を受ける者から役務の対価を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領すること(購入者又は役務の提供を受ける者をして販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)の指定する銀行その他預金の受入れを業とする者に対し、二月以上の期間にわたり三回以上預金させた後、その預金のうちから商品若しくは権利の代金又は役務の対価を受領することを含む。)を条件として指定商品若しくは指定権利を販売し、又は指定役務を提供すること。

 

 

にほんブログ村 士業ブログ 司法書士へ

にほんブログ村


司法書士ランキング