おはようございます。目黒区の司法書士の増田朝子です。

株式会社が出資して(つまり発起人となって)、子会社を設立することがあります。

子会社を設立することについては、通常の会社設立の手続きとほぼ変わりませんが、
この場合、親会社側の手続きについてふと疑問に思い、調べてみました。

子会社の設立については、重要な財産の処分行為にあたるようです(出資が伴うので)。

重要な財産の処分については、取締役会設置会社では、会社法362条4項に基づいて取締役会決議により決めなければならないことになります。
確かにネットで調べると、大会社のHPなんかには「取締役会の決議に基づき子会社を設立しました」とのインフォメーションが出ています。

では、取締役会非設置会社の場合はどうなのでしょうか。

取締役会非設置会社では、株主総会は万能の機関であるため、会社法295条にあるとおり一切の事項について決議をすることができます。
よって、株主総会で子会社設立の決議をしておけば間違いはありません。

しかし、「株主総会で決議をすることができる」のと、「株主総会で決議しなければならない」のとは異なります。

取締役会非設置会社の取締役の業務執行については、会社法348条では2名以上いるときは取締役の過半数(一人の時はその取締役)の決定によると定められていますので、
子会社の設立(出資)などの重要な財産の処分も含め、会社の業務は取締役の過半数で決定することが原則ですが、株主総会で決議することもできるということです。

ところで、取締役会設置会社では取締役会で決議できても、
取締役会非設置会社では、会社法の個々の条文に「株主総会の決議によらなければならない」と定められている事項は、
取締役の過半数の決定ではなく、株主総会で決議しなければなりません。

たとえば、以下がその例です。
・取締役の競業取引および利益相反取引の承認(356条)
・子会社からの自己株式の取得(163条)
・取得条項付株式の取得(169条)
・募集株式発(行の割当(204条)、株式分割(183条)、株式無償割当(186条),等

上記のとおり、取締役会設置会社では取締役会の決議とされていること全てを、取締役非設置会社の取締役の過半数の決定でできるわけではないようです。

取締役の業務執行を定めた会社法348条については、重要な財産の処分についての記述はないのですが、
それでも同3項は各別の取締役に委任できないことを記載しているだけであって、重要な財産の処分自体が取締役の業務執行の対象ではないと言っているわけではないようです。

長くなりましたが、結論としては株主総会決議でも取締役の過半数の決定でもどっちでもいいという訳ですが、
子会社は設立(出資)して終わりという訳でもないので、個人的には株主総会の決議の方をお勧めしたいと思います。

以下参考の条文です。

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(株主総会の権限))
第295条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

(取締役会の権限等)
第362条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け ※【処分には出資が入る】
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。

参考【判例】
「重要な財産の処分」についての判例(最判平成6年1月20日民集48巻1号1頁)。
「重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、
処分行為の態様及び会社における従来の取り扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。」

(業務の執行)
第348条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が2人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
一 支配人の選任及び解任
二 支店の設置、移転及び廃止
三 第298条第1項各号(第325条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
四 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
五 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
4 大会社においては、取締役は、前項第4号に掲げる事項を決定しなければならない。

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