おはようございます。目黒区の司法書士の増田朝子です。
先週の土曜日は、東京司法書士会研修部主催の平成30年度民事保全・執行手続研修に参加してきました。
この研修では、9月の8日と29日の土曜日2日間にわたり、民事保全と執行手続きの基本事項と最新の実務情報・論点について具体的な事例を踏まえての講義が行われます。
この研修は、多少内容は異なりますが、司法書士が基礎的な民事保全・民事執行の知識を身に付けられるよう、毎年行われているものです。
私自身、民事保全や執行の知識も遠い昔(受験時代)に勉強したっきり...と言っても過言でもない状態でしたので、思い切って参加してみました。
一日の講義は午前午後の二コマです。
午前の講義は、民事保全手続きについて、東京地裁の女性裁判官による講義でした。
午後からは、不動産競売手続きについて、都内の弁護士事務所に所属する弁護士による講義でした。
裁判官と弁護士が講師だったこともあり、裁判所側と申立人の立場で、それぞれの手続きの流れをよく確認することができましたが、特に民事保全手続きについては、大変分かりやすい講義でした。
民事保全手続きの特色は、①暫定性、②緊急性、③付随性、④密行性です。
つまり本案判決を得るまでの仮の手段であって、素早く秘密裏に行う必要があり、また本案の内容によっては取り消しされるものとなります。
講義によると、裁判所での対応は本当に素早いものでした。
例えば東京地裁では、早ければ仮差押えの申立の翌日には【全ての】債権者について面談を行い(裁判所によっては面談なしのようです)、その面談の席で担保の額が決定されて、債権者は7日以内に担保を供託し、再び保全裁判所へ供託書を提出すれば、翌日発令とのこと。
申立の翌日に面談し、その翌日に供託して裁判所に供託所を提出すれば、その翌日には発令されます。
つまり、最速では申立からわずか3日で発令が可能とのことでした。
申立時の担保の額は、仮差押え等の目的物の価額によって定められます。
例えば不動産に対する仮差押えなら固定資産税評価額の10%~20%、金銭債権に対するなら20%~です。
共に価額が1500万円だとしたら、不動産の場合の担保は150万円程度、金銭債権なら300万円程度が債権者側の担保になります。
この違いですが、金銭債権例えば預金等の仮差押えの場合の方が、単に仮差押えの登記がされるにすぎない不動産の仮差押えより、銀行取引停止やそれに伴う信用の毀損等による債務者側のダメージが大きいことを考慮しているためとのことでした。
債権者の仮差押え等の執行の停止するため、債務者には仮差押解放金が定められます。
仮差押解放金は仮差押えの目的物の代替となるものなので、原則目的物の価額となります。
例えば上記事例なら仮差押解放金は1500万円になることになります。
ただし、請求債権を超えられないので、もし請求債権が900万円であれば、仮差押解放金は900万円となる、とのことでした。
などなど...
基本的ですが、分かりやすい講義に大満足な一日でした。