おはようございます。目黒区の司法書士の増田朝子です。
7月25日(水)、私が所属する東京司法書士会の専門研修室主催の第一回専門研修会が開催されました。
研修内容は、「リビングウィルを司法書士の立場から考える(任意後見契約における尊厳死宣言及び医療行為の同意について)」でした。
そもそもWikipediaによると、一般的に「リビングウィル」とは、「尊厳死の権利を主張して、延命治療の打ち切りを希望する」などといった意思表示のことになります。
特に日本尊厳死協会では、上記「リビングウィル」を「リビングウィル(終末期医療における事前指示書)」(以下、事前指示書といいます)として作成・登録することで、人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておくことができます。
事前指示書は、ひな形として内容が決まっており、その中から自分が希望する事項を選択したうえで、署名捺印をすることで完成するものになります。
協会に事前指示書を登録するためには、協会の会員になって、年間2000円を支払う必要があります(終身会員であれば7万円)。
一方、公正証書で作成される尊厳死宣言(尊厳死宣言公正証書)も、上記Wikipediaでいう「リビングウィル」の一形態でありますが、より自由に・具体的に終末期を迎えた際の希望を自己の意思表示として残しておくことができるものです。
もちろんある程度のひな形も公証役場で用意されています。公証役場での作成費用は1万2千円程度のようです。
尊厳死宣言公正証書は、同じく公正証書で作成される任意後見契約に付随して作成されることが多いようです。
しかも、任意後見人として「家族以外の人」が指定される場合に多いとか。
なぜならそのような任意後見契約を選択する方は、頼れる家族や親族がいないという事情があり、晩年の生き方等すべて自分で決めなければならない事情があるからとのことでした。
今回の研修で、一番印象的だったのは、実際に人が終末期を迎えたとき、人は必ずしも事前の意思表示(リビングウィル)どおりの選択をするとは限らないということでした。
ある事例ですが、クリエイティブな職業につかれていた方が創造的な生活ができなくなった場合には尊厳死を選択するようなリビングウィルを作成していたけれど、実際生きるか死ぬかの瀬戸際で、事前の意思に反して延命の意思表示をし、結果延命措置が取られました。
その方はもはや創造的な生活を送ることができなくなりましたが、その後も何の後悔もなく幸福に生き続けたということでした。
いくら生前に上記の日本尊厳死協会に事前指示書が登録されていたり、尊厳死宣言公正証書が本人によって用意されていようとも、それは絶対ではないということです。
作成されたそれらの文書はあくまでも作成時点での意思表示であって、「命」を自己の意思で終えるプロセスは慎重であるべきで、関係者は可能な限り「その時の」本人の意思を確認することが必要であるとのことでした。
しっかり心にとめておきたいと思います。
日本尊厳死協会 HP
http://www.songenshi-kyokai.com/living_will.html
京橋公証役場 HP(尊厳死宣言公正証書のサンプル、作成費用等)